【コラム】夢から醒めたあなたへ(ニュールック騒動に向けて)

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昔、私のことをよく知るオネエさんが、私にこんなことを言った。
「かおりちゃん、あのね、わたしディズニーランドって本当に興味がないの。あれは全部が作り物で、あんな作り物の一体何が楽しいのかわからない。」

私は昔から夢見る夢子ちゃんで、でも貧乏で、一年にたった一度だけ行ける東京ディズニーランドだけが心の支えだった。
ある時からずっと東京ディズニーランドは私のすべてだった。
それを知ってなおも私にこう告げたあの人の言葉を、私は隣でただぼんやり聞いていたけど、でも別に怒りや悲しみは湧かなかった。
こういう人は世間には一定数いる。ディズニーに一切の興味を払わない人って。
日本人は総じてディズニー好きと言われるけれど、実は男性にも女性にもこういう人は結構いるんだ。
そして実は私も。
私も気づいていた。
ずっと前から知ってた、子供の頃から気付いていたんだ。
私の憧れる、あれはただのよくできた作り物であることを。
でも気づかないふりをしていただけ。

あのオネエサンの言葉から何年経ったのかは忘れたけれど、2019年になっても間違いなく世界はクソのまんまだ。
消費税は上がるしなのに物価はあがるし、なんなら世界から戦争はなくならないし、今日も日本で世界のどこかで罪のない子供達がバンバン死んでいっていることを私はきちんと知っている。
Happiest Place on the Earthなんて嘘ばっかりだクソ喰らえだこんなまがい物!って私も言えたらいいけど、私は弱くて、言えないままこんなクソな大人になってしまった。
一時(いっとき)の甘やかな幻想に浸るために、嘘を重ねて、今日もへこへこインパークしてる。

To all who come to this happy placeと全ての人に開かれたディズニーランドで、でも来る権利のない人はいると私は思っている。
ディズニーランドがただの作り物だと言っちゃう人。
ミッキーマウスに人間が入っていると言っちゃう人。
あのオネエさんのように、夢を見る気がそもそもない人。
それはパークを維持する最低限のルールとして、基礎中の基礎の入園ルールだと私は思っている。
これはもう、お弁当を持ち込まないで、パークで走らないで、とか以前の話。
みんなで気持ちよく楽しく、このひとときだけは夢を見ましょうよと、そのためには入園するみんながこのルールだけは共有しましょうねってそういう簡単な話。

なのに今年、急にミッキーミニーのライブキャラクターのニュールックの話が再燃しだして、この最低限のルールが完全に破られてしまって、私はむちゃくちゃに怒り狂っている。
今まで全然ディズニーに興味のない人が、ネズミーランドとか、ミッキーの中の人とか、全然面白くもないことを言って馬鹿にするのを私は完全にスルーしてた。
だってどうでもいいもん、ディズニーに興味のない人がなんと言おうと私は意にも介さない。
でも今回の話は別だ。
自称ディズニーファン、自称ミッキーマウスの大ファン達が、彼を、ミッキーマウスを、ミッキーマウスとして見ていない。

その自称ミッキーマウスの大ファン達は口を揃えてこう言う。
私たちはデザインの話をしている、単に造形の美醜の話だ。
別にミッキーマウス本人のことをどうこう言ってはいないからいいじゃん、と。
まるで免罪符のように口を揃えるけれど、でもそれはなんの免罪にもなっていないよ。
ミッキーを顔のデザインで見ていること、新旧を比べ、それらのミッキーをまったく別のものとして脳内で捉えること、それ自体がもうミッキーマウスという存在を貶め辱めていると私は思う。
ひとつだけ言いたい。
あなたたちはもうこの夢から醒めてしまった。
ミッキーマウスをミッキーマウスとして見れなくなった時、悲しいかな、あなたの甘やかな夢は潰えた。
それはOLCのせいでも、ましてやディズニー本社のせいでもない。
この問題の本質はミッキーの顔にはない。あなたの心の中の問題だから。
いつか、どこかのタイミングでは必ず終わってしまうようなこれは儚い夢だった。
変わってしまったのはミッキーではなく、夢を見れなくなってしまったあなた。
思春期をすぎてなおもこの馬鹿げた夢を見続けると決めたのもあなただし、そしてその夢からの覚醒を決めたのもあなた。
変わったのはあなた。
それだけの話。

だからもうパーティーは終わり。
全部もう、終わり。
でも一つだけお願いがある。
どうかどうか、他の人の夢まで終わらせないで欲しい。
あなたの夢は醒めた。でも私たちはまだこの場所でミッキーと夢を見ていたい。だからどうか引きずり込まないで。
ミッキーをミッキーでないと大声で騒ぎ立てて言わないで。
どうか私たちには気づかないままにさせて。
ミッキーはミッキーのまま、今日も東京ディズニーランドで、世界中で、昨日までと変わらずゲスト達を迎えていることを無視しないで。
夢を見させて欲しい。どうかお願いします。

何を言っても通じないのはわかっている。
だからこっそり書いて憂さ晴らしをした。
卑怯と言われてもいい。だって私の言葉は何ひとつ通じないからね。寂しいけれど。

怒りのままに書いた。推敲はしない。
これをもって、丸三年間追い続け、願い続け、そして達成した私の中のニュールック騒動を終わりとしたい。
この顛末を私は一生忘れないと思う。
どうもありがとうございました。

丸三年が経とうとしている。
あの初めてニュールックのミッキーを見た日から未だ、私の夢は醒めないでいる。ありがたいことだ。
どうか死ぬその日まで、私の夢が終わりませんように。

(2019年3月31日 記事公開 2019年4月1日午前 一部意図する文章が真逆で表現されていたので修正)